新たな金銭債権として注目を集めている「でんさい(電気記録債権)」。電子的に記録を行い、その内容をもとに取引が行えるようになりました。
スピーディーに取引ができるだけではなく、簡易的かつ安全性を保ったうえで債権の発生や譲渡などが行えることから、多くの企業や個人投資家が導入を始めている状況です。
とはいえ、まだまだでんさいに関する正しい認識は広がっておらず、「そもそもでんさいとは何か」といった疑問を抱いている方も少なくありません。
そこで、今回はでんさいの概要や、割引・現金化・資金化について詳しく解説します。
目次
でんさいの現金化の流れ
でんさいによる、約束の支払期日に行う決済の基本的な手順としては、まず取引が発生し、支払う側が、銀行のシステムを通じて「発生記録」の請求を行います。
請求により、電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行ないます。
支払期日になると、支払う側の銀行口座から受取る側の企業の銀行口座に、資金が自動的に振り込まれます。
でんさいは、第三者に譲渡もでき、現金化までの流れは、まず取引で現金を支払うSさんが、銀行のシステムに「発生記録」の請求を行います。
電子債権記録機関は、記録原簿に「発生記録」を行ない、これで債権が生じます。
これを受取った「でんさい」の債権者であるNさんは、別の取引先のBさんへの支払いのために「でんさい」を譲渡することを、銀行のシステムを通じて「譲渡記録」の請求を行います。
電子債権記録機関は、これを受けて「譲渡記録」を行ない、これで譲渡が完了します。
支払期日になると、Sさんの銀行口座からBさんの銀行口座に資金が自動的に振込まれます。
でんさいによる割引き
手形割引は、金融機関または業者に、手形を支払期日前に買い取ってもらって現金化することです。
手形割引の場合は通常は額面金額の全額を割引しなればいけませんが、でんさいの場合は必要な分だけを分割し、譲渡金額から割引料を引いた希望手取金額を計算、割引(現金化)できるというメリットがあります。
現金化までの時間としては、通常の手形割引の場合、専門業者に手形を持ち込む場合で1~2時間、遠方だと郵送で1~3日くらいとなります。
でんさい割引の場合、最短で30分と、当日申込んで当日現金化が可能で、事前に審査・見積を行えば、 でんさい譲渡発生後10分くらいで入金確認ができます。
でんさいによる現金化のメリット
でんさいの現金化は、パソコンやファクシミリで手続きでき、現金の受取りは自動送金なので、集金に言ったり、手形のような取立や割引に関する手続きの手間もかかりません。
必要最小限だけを実行することで、手間と時間の節約になります。
でんさいとは
でんさいとは、正式には「電子記録債権」といい、これまで採用されてきた「手形」「振込」に代わる決裁手段のことです。株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が展開している電子記録債権であり、事務負担の大幅な軽減が期待できるのが魅力です。
実際、従来の方法である「手形」の場合、現物管理から手続き、印紙押印、封入発送…とさまざまな工程を踏んでいく必要がありました。
しかし、でんさいを活用すれば、工程は支払い利用であれば「手続き」のみ、受け取り利用であれば「債権内容確認」のみにとどまります。
これまで時間や手間がかかっていた部分が大幅に省略できることから、効率化や時短の面でメリットを得られます。
でんさいは割引・現金化・資金化できる?
でんさいを活用するにあたって、割引・現金化・資金化が可能なのかといった点は気になるところではないでしょうか。
ここからは、でんさいを最大限に活用するための、それぞれの詳細について解説します。
支払期日より前に可能
でんさいにおける割引・現金化・資金化は、支払い期日より前に行うことが可能です。
電子記録債権割引(でんさい割引)として、これまで従来の方法として使われていた「紙の手形」の代わりに電子化した金銭債権を、定められた支払い期日よりも前に現金化・資金化することができます。
これは、銀行や貸金業者にでんさいを譲渡して、割引を利用したうえで資金化できるのが特徴です。
なお、上記の「割引」とは、将来の現金が万が一不渡りになってしまったら…といった事態に備えて現時点で現金化することを指します。
分割・譲渡をしない方法もあり
分割や譲渡をせずに、でんさいを現金化・資金する方法もあります。
これまでとは異なり、手形を取立に出すなどの手間をかける必要はありません。支払期日になると、でんさいの債権金額が全額口座に入金されます。
うっかり手形を取立に出し忘れてしまった、といった経験がある方にとって無駄を省いた便利なサービスと言えるでしょう。
でんさい割引・現金化・資金化の流れ
でんさいを割引き・現金化・資金化する場合はどのような流れで行うのでしょうか。
ここからは、具体的なステップを解説していきます。
期日決済の場合
期日決済の場合は、以下のような流れで行います。
1.商取引が発生
2. 支払企業が、銀行のシステムを通じて「発生記録」の請求を実施
3. 「2」に伴い電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行う
4. 支払期日当日に支払企業の銀行口座から受取り側の企業の銀行口座へ資金を送金
譲渡されたでんさいの決済の場合
譲渡されたでんさいの決済の場合は、若干複雑な傾向にあるので、わかりやすく解説します。
1. 商取引(商品の仕入れなど)でお金を支払う側の会社A社が、銀行が提供するシステムに「発生記録」を請求
2.「1」に伴い電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行う
3.「2」を受け取った「でんさい」の債権者B社がC社に「でんさい」を譲渡することを理由として、システム上で「譲渡記録」の請求を行う
4.電子債権記録機関は、「譲渡記録」を行なう
5.支払期日当日にA社の銀行口座からC社の銀行口座へ資金を送金
割引依頼をして現金化する場合
割引依頼を経て現金化する場合には、以下の手順で行ってください。
1.支払い側の企業がシステムを通じて「発生記録」の請求を実施
2.「1」に伴い電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行う
3.受取り側の企業がシステムで「割引申込」を行う
4.割引申込を受けた銀行は審査を行う
5.電子債権記録機関に「譲渡記録」を請求
6.割引が実行され銀行から受取り企業の口座に入金
7.支払期日に支払企業の銀行口座から割引を行った銀行へ資金を送金
でんさい割引・現金化・資金化の手数料
でんさいは、手形とは異なり取立料がかかりません。しかし、電子記録債権の譲渡1回ごとに手数料がかかります。
でんさいにおける割引・現金化・資金化の手数料は、金融機関によって異なるため一概にはいえませんが、220円~880円が相場です。
なお、手数料を負担するのは、でんさいを譲渡する側となるので注意してください。
おわりに
従来の方法とは異なり、利便性や手軽さなどメリットが多い決済手段であるでんさい。
馴染みのない方にとっては、やや難しいイメージを感じてしまうかもしれませんが、基本をおさえればスムーズに使えるようになるでしょう。
ぜひ、でんさいに興味がある方は、今回ご紹介した内容を参考にしながら、便利な決済方法として検討してみてくださいね。